産業医とは、産業医学の専門家として、企業などで働く従業員の健康管理を実施する資格を持った医師のことです。健康診断などの健康管理だけでなく、衛生教育や職場巡視などを行って、従業員が健康で快適な職場環境のもとで仕事ができるように、専門的な立場から指導や助言を行います。50人以上の従業員がいる事業所では、産業医を置くことが法律で取り決められており、労働者1,000人以上の企業では、専属の産業医の設置が義務づけられています。産業医の多くは嘱託産業医で、開業医や勤務医が日常診療の傍らに業務を担っているケースがほとんどです。
産業医は、職場環境の改善や従業員の健康維持管理のために企業や人事担当者、従業員本人への意見や助言をするアド バイザーとなるので、基本的に医療行為は行いません。つまり産業医学は、患者を治療したり、新たな医学的な発見をする場 ではないため、関心を持つ医師は多いとはいえませんが、産業医としての経験や知識は、臨床の場でも必ず役に立つはずです 。
1996(平成8)年の労働安全衛生法の改正により、「産業医は労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する 知識について厚生労働省令で定める一定の要件を備えた者でなければならない」と規定されました。 (安衛則第14条第2項)
かつて医師であれば誰でも産業医の職務を行えましたが、1996年の法改正により、職場内における労働環境やそれか ら生じる疾患との因果関係といった基本的な知識が必要だという理由から資格制度になりました。産業医として活動す るためには、認定産業医資格が必要です。これは日本医師会が定めている資格で、所定の研修施設で決められた単 位を履修する必要があります。